中国ホワイトハッカーのお給料はおいくら万円?

牧野武文

April 10, 2018 08:00
by 牧野武文

中国のセキュリティエンジニアは、どのくらいの給料をもらっているのか。中国情報安全評価センターは、「中国情報安全従業員現状調査報告(2017年版)」(PDF)を公開した。これによるとITの急速な発展により、中国の産業地図に変化が起きていることが明らかになった。

中国でも男性が多い職業

中国で急成長をするIT産業。やはり中国でもセキュリティエンジニアが不足をしており、待遇は年々よくなっている。この「中国情報安全従業員現状調査報告」は、中国のセキュリティエンジニアの待遇面を全国調査したものだ。各省、自治区、直轄市をカバーし、各組織形態(国営、民間など)をカバーするように対象者を選び、2037人にネットでアンケートを依頼し、1957人から有効回答を得た。

報告書によると、セキュリティエンジニアの男女の割合は、男性が88.6%で女性は11.4%、最も多い年齢層は20代で、20代と30代で全体の90%近くになる。経験年数は、3年から5年という人が多く、セキュリティエンジニアという職業自体が極めて若く、新しいものであることがわかる。

ちなみに転職サイトDODAが発表した「あの職種とはどんな仕事?DODA職種図鑑」によると、日本のデータベース/セキュリティエンジニアは男性84%女性16%となっており、中国のセキュリティエンジニアは日本と同様に男性社会であることがわかる。

中国特有の状況だと思われるのが所属組織だ。民間企業に所属をするセキュリティエンジニアが多いのは当然として、外資企業が意外に少なく、政府機関が意外に多い。


年齢的には20代と30代が中心。米国などでは平均年齢が40歳を超えているが、比較的新しい職業であることから平均年齢は若い


経験年数も3年から5年が最も多い。しかし、6年以上の人も徐々に増えてきている。

公的機関に多いエンジニア

中国には、グローバルIT企業は多くはない。フェイスブック、ツイッター、ユーチューブなどは国内からの接続が禁止されている。国内IT企業を保護するためと、情報の流出を防止するためだ。そのため、グローバルIT企業の多くは研究部門を中国に置くに留まっている。

また、政府機関に所属するセキュリティエンジニアが多いのは、人民解放軍や公安などではないかと推測される。

また行政関係にもセキュリティエンジニアは多いのではないかと推測される。なぜなら、中国のIT産業の大きな特徴は、行政が積極的に支援をすることだからだ。例えば、アリババは、スマホ決済「アリペイ(支付宝)」の支払い履歴などに基づいて、利用者の与信情報を算出する「芝麻信用」という社会信用スコアシステムを提供している。このスコアが一定得点以上になると、無審査でローンが組めるようになるなどの得点がある。行政も積極的に参加をしていて、一定得点以上だとビザの申請を簡略化したり、専用の出国ゲートを利用できるなどの特典を与えている。そもそも、この芝麻信用のベースになっているのは、政府から提供された身分証データベース(日本のマイナンバーデータベースに相当)なのだ。

また、行政は、スマホ決済のアリペイやWeChatペイ(微信支付)も積極的に活用していて、税金の支払いや本人確認に利用されている他、駐車違反の罰金ですら違反切符記載のQRコードをスキャンして支払えるようになっている。

このため、行政機関内にも多数のセキュリティエンジニアがいると推測される。


民間企業に所属するセキュリティエンジニアが最も多いが、中国の場合、政府機関に所属するセキュリティエンジニアが多いのが特徴だ

盛り上がるBAT

セキュリティエンジニアの勤務地を見ると、中国の産業地図に変化が起きていることがはっきりとわかる。

首都である北京、ものづくり拠点である深圳が多いのは当然として、華東地区が第2位になっている。これは杭州市にアリババがあるからだ。中国ではBATという呼び方が使われ、これはBaidu(バイドゥ、百度)、Alibaba(アリババ、阿里巴巴)、Tencent(テンセント、騰訊)の頭文字をとったものだ。百度の北京、杭州のアリババ、深圳のテンセントの周辺には無数のIT企業が集まり、この3都市が現在の中国経済を牽引している。

一方で、金融の大都市である上海と香港の存在感が薄くなっている。両都市とも成長はしているが、IT都市の成長速度に追いつくことができず、相対的に地位が低下してしまっているのだ。上海市は危機感を覚え、AI@SH(AI上海)政策で、人工知能開発の中心地にする動きを見せているが、香港は現在のところ停滞してしまっている。

西南地区もセキュリティエンジニアが多い。この中心地は重慶と成都で、両都市も積極的にIT産業を振興して、北京、深圳、杭州をキャッチアップしようとしている。


勤務地は北京、深圳、華東(杭州)のBATの本拠地が多い。一方、上海、香港は相対的に地位が低下している

セキュリティエンジニアの年収は?

誰もが気になるセキュリティエンジニアの年収は、半数以上が6万元(約100万円)から15万元(約250万円)の間で、平均は12万864元(約200万円)となっている。一見、低く見えるが、エンジニア全体の平均は7万6325元(約129万円)なので、中国としてはかなりの高給になる。

なお、日本のセキュリティエンジニアの平均年収は、DODAサイトによると503万円(支給額、手取りではない)となっているので、中国の報酬はちょうど日本の半分程度になる。

しかし、トップクラスであるBATの場合、セキュリティエンジニアの報酬は日本より高いかもしれない。BATのセキュリティエンジニアの報酬は公表されていない(業績により大きく変動するため)が、初任給は各企業が募集要項で公開している。それによると、BATクラスのIT企業では大卒初任給が350万円から430万円というところが多い。また、BATの研究職(要博士号)では初任給がいずれも1200万円から1400万円になっている。

セキュリティエンジニアだけではないと思うが、中国はどの企業に勤めるかで年収が大きく変わる。報酬格差は明らかに日本よりも大きい。


年収の平均は12万元(約200万円)程度。しかし、企業による待遇の格差は大きい

才能があれば収入がついてくる

もうひとつ興味深い統計が、学歴別の年収だ。学歴が高いほど年収が高くなる傾向があるのは当然だが、高卒以下という最低の学歴で、なぜか50万元(約840万円)という高収入を得ているセキュリティエンジニアが一定数いる。博士号取得者の11.1%が50万元以上であるのに対し、高卒以下も10.8%が50万元以上と、さほど変わらない。

これは、才能のある高校生ホワイトハッカーが多数スカウトされていることを示している。中学生、高校生で頭角を現し、そのまま仕事をしてしまう低学歴ハッカーというのは米国や中国ではすでに珍しくなくなっている。

「チャンス」という観点では、日本よりも中国の方が恵まれている。しかし、それは裏返せば不安定ということでもある。中国の給与システムは完全に業績評価連動で、会社員で億を超える給与を取るものもいれば、うかうかしていると年収100万円の世界に落とされて、そこで漫然としていれば、数ヵ月で解雇される。より高い給料を求めて、数年で転職をするのもごく普通のことで、サラリーマンというよりは野球選手のようなプロアスリートのような雇用環境だと考えた方がいいのかもしれない。

セキュリティエンジニアにとって、チャンスの中国と、安定の日本。いずれが好ましい環境だろうか。


学歴が高いほど年収も大きくなる傾向があるが、高卒以下でも高収入を得ているセキュリティエンジニアがいる。若いうちに天才的な腕を見込まれ、スカウトされたホワイトハッカーだ

ニュースで学ぶ中国語

 
信息安全(xinxi anquan):情報安全。情報セキュリティ。中国ではセキュリティエンジニアは高給が取れる花形職業のひとつ。ただし、長時間労働はごく当たり前のことになっている。

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