ビール祭りにやってきた犯罪者を「顔認識」で一網打尽

牧野武文

November 13, 2017 08:00
by 牧野武文

中国山東省青島市で開催された国際ビール祭りで、青島市開発区警察は、会場に顔認識システムを設置。公安部保有のデータベースと照合することで、犯罪者を抽出し、逮捕するという作戦を実行した。49名の逃亡犯、麻薬犯罪者、スリなどを逮捕する成果をあげたと『新浪科技』が伝えた。

10万人以上がやってくるイベント

山東省青島市は、ビールが有名だ。以前、ドイツの租借地があった関係で、街中にはドイツ風の建築が多く、ドイツのビール造りが行われてきた。その最も古いブランドのひとつ「青島ビール」は、中国で最も有名なビールだ。第一次世界大戦後のベルサイユ条約で、青島市のドイツの権益を日本が引き継いだため、青島ビールは、日本の大日本麦酒が経営していたこともあり、日本人の間でも最も有名な中国ビールブランドになっている。

その青島市では、毎年「国際ビール祭り」が開催される。64万平方メートルの会場に、少ない日でも5万人、多い日では10万人以上の参加者が訪れる3週間に渡る大イベントだ。

このビール祭りの間に、逃亡犯25名を逮捕。麻薬犯罪の前科のある者を71名捕捉、うち会場内で麻薬を利用、販売した現行犯19名を逮捕。さらに、スリの前科がある者を37名捕捉、うち5名を会場内のスリ現行犯で逮捕するという成果をあげた。

行列を監視カメラで撮影

ビール祭りの会場は64万平方メートル(東京ドーム約14個分)と広大だが、出入り口を4箇所に限定した。そして、この4箇所の入場口に18台の高精細カメラを取り付けた。

中国のこのようなイベントでは、警察による荷物検査があるのが一般的だ。行列に並び安全検査を受け、それが終わるとチケット購入の行列に並ばなければならない。行列に並んでいる時間が長いため、カメラは全員の顔を正確に捉えることができる。撮影された映像は、顔認識を行い、公安部保有のデータベースとの照合が行われ、犯罪者であると判明するとアラートが発せされ、待機している190名の警官が職務質問と逮捕に向かう。

当局の発表によると、期間中に230万枚の顔写真が撮影されたという。

人間の顔の識別率は98.1%(Tシャツの柄なども顔と認識されてしまうことがあった)、データベースとの照合での正解率は85%程度だったという。しかし数秒でアラートが発せられるので、行列に並んでいる容疑者のもとに急行し、職務質問をし、本人確認をした上で逮捕するには充分な時間があった。


稼働中の顔認識システム。安全検査やチケット購入の行列時を捉えるので、かなり鮮明に顔を認識できる。公安部のデータベースと照合し、逃亡犯、前科者などの場合は、アラートが発せられる(画像は「新浪科技」より)


監視カメラを準備する警察官。4つの入場口に、18台の監視カメラが設置された。カメラをどの角度で設置するかで、認識率が大きく違ってくるという(画像は「新浪科技」より)

4人組は全員スリ

この顔認識逮捕システムは、逃亡犯の逮捕だけでなく防犯面でも成果を上げた。このような混雑するイベントで、最も懸念されるのは「スリ」だ。そこで、このシステムでは逃亡犯だけでなく、スリ前科者も識別するようになっている。

開催日の夕方6時、4人組の入場者が全員スリの前科があるというアラートが発せられた。警官が急行し、その4人組に職務質問をかけた。前科があるというだけで逮捕はできないので、身分証を確認するだけだったが、その4人組はすぐに退場をした。

しかし30分後、別の入り口から彼ら再入場しようとした。これもアラートが発せられる。これも警官が急行して、職務質問を行った。さすがに4人は慌てた様子で、そのまま退場してしまい、もはや入場しようとしなかった。

中には職務質問を受けても、平然と会場の中に入り「仕事」をするスリグループもいた。しかし退場しないスリ犯には、別の警官が行動監視をするので、多くがスリの現行犯で逮捕することができた。

スリ犯に関しては、顔認識システムが37名を捕捉。32名はそのまま退場して、会場を去ったが、5名が会場内でスリ行為を働いた。だが、この5名に関しては行動監視をしていた警官により、現行犯逮捕されている。


現行犯逮捕されたスリ犯。前科がある者には職務質問するので、危険を感じた者はすぐに会場を去ってしまう。しかし、中にはそれでも会場の中に入って犯罪を行う者もいる。もちろん、警察官が監視をしているので逮捕されてしまう(画像は「新浪科技」より)

日本で難しい監視システム

今後、故宮博物院のような大型観光施設、大規模イベントなどには、このような顔認識システムが導入されていくと見られている。前科のある人間を発見して、予防的に安全を確保することができ、なおかつたまたま訪れた逃亡犯なども一網打尽にできるからだ。

日本で同様のことが行われたら、プライバシーとの絡みで議論になるだろう。だが、中国ではプライバシー議論は起きてなく、市民はこのような施策を受けているようだ。

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