インド政府がアリババのUCブラウザーを使用禁止に

牧野武文

November 6, 2017 08:00
by 牧野武文

インドIT部門の高官が、アリババ製のAndroid用ブラウザー「UCブラウザー」の使用禁止を検討していることが、波紋を呼んでいる。禁止の理由は、UCブラウザーがデータを違法に送信しているからだというものだが、アリババや中国メディアは反発をしており、インドと中国の外交関係にも暗雲が立ち込めているとIT時代網が報じた。

個人情報を収集するブラウザー!?

UCブラウザーは、インド市場において、49%のシェアを握り、グーグルのChromeとトップの座を争っている。インドでは1億人のアクティブユーザーがいて、全世界では4.2億人のアクティブユーザーがいる。USブラウザーはUC Web社がリリースしているが、同社は2014年にアリババに買収されている。

ことの起こりは、トロント大学のレポートで、UCブラウザーは利用者の個人情報を収集しており、なおかつ情報漏洩の可能性がある脆弱性を持っていると報告されたことだ。このレポートが公表されると、インドのIT部門の高官が「UCブラウザーがインドのスマートフォンユーザーの個人情報を、中国のサーバーに送信していることは遺憾なことで、この件を調査しなければならない」と発言した。

アリババのUCブラウザー担当広報は、この事態に反論。「UCブラウザーは、利用者のプライバシーを尊重している。サーバーは世界中に分散しており、情報を中国に吸い上げているということはありえない。私たちは、利用者に対する背信行為は決してしない」。またUCブラウザーは利用者の利用情報を暗号化しており、なおかつ利用国の法律を遵守するように努力していると付け加えた。

さらにUCブラウザーは、インド政府を含むいかなる政府からも公式のクレームを告げられたことはないと明言した。また、利用情報を収集するのは、UCブラウザーを改善するためであり、他のブラウザー、アプリの多くも行っていることであり、ごく一般的なものにすぎないとも付け加えた。


問題となったUCブラウザー

政治的な判断による発言か

IT時代網は、インドの経済戦略にUCブラウザーは巻き込まれたのではないかと論評している。

2016年、中国とインドの貿易額は711.8億ドルだが、インドの輸出額は117.5億ドル、輸入額は594.3億ドルで、インドが大きく輸入超過となっている。インドの経済、生活は中国製品に依存する傾向が強まってきており、デジタル関係も例外ではない。これはインドの外交戦略上、きわめて不安定な状態を招きかねない。つまりインドと中国の間になんらかの紛争が生じた場合、中国がインドに対して輸出制限をすると、インドの経済と生活が成り立たなくなる。

そのような状況を招かないためにも、中国からの輸入を減らし輸出を増やし、貿易バランスをとっておきたいのではないか。

インドの自動車タイヤ業界は、インド政府に中国から輸入するトラックタイヤ、ラジアルタタイヤに対して、不当廉売関税をかけるように要求し、インド政府は8月9日から、中国からの輸入製品93品目に対して不当廉売関税をかけている。

不当廉売関税とは、輸入品がダンピングを行った場合、国内産業を保護するために、正規価格とダンピング価格の差額を関税として徴収する制度。つまり、輸入品のダンピング戦略を無効化する処置だ。この93品目には、タイヤだけでなく、石油製品、金属製品、繊維製品、プラスティック製品の他、電子製品も含まれている。

中国製のスマートフォンは、性能がよく価格も安いことから、インドでも大きなシェアを握っていて、インド市民からも歓迎されているが、この不当廉売関税の実施により、インド国内の販売店と消費者はショックを受けている。

しかしこの政策を支持する意見もある。インドの携帯電話メーカー「インテックス」の創設者は、IT時代網の取材に応えた。「インド政府には、インド市民のことを考え、インドで販売される中国製スマホに対して、不当廉売関税をかけ続けてほしいと願っています。さらに、インド工場で生産される中国製スマホにも、同じく不当廉売関税に相当する処置をお願いしたいと思っています。政府と私たちメーカーは親と子のようなものです。子が成長するまで、親が守るというのは当たり前のことではないでしょうか」。

グーグルがOKで、アリババがNGな理由

インドの産業界には、次第に反中国の空気が生まれている。膨大な中国製品が流れ込んできて、成長過程にある国内産業がなかなか育っていかないからだ。UCブラウザーの問題も、このような背景の中で起きたものだとIT時代網は解説をしている。

もちろん、この考えは中国メディアであるIT時代網のもので、それが正しいかどうかはわからない。しかし一理はある。近年「中国製のソフトウェアが利用者情報を収集している」と非難される事態が続いている。ところが他の製品、例えばグーグルやアップルも、利用者情報を収集している。そして、私たちはそれをソフトウェアやサービスの改善のために使われていると了解している。同じことを中国製ソフトウェアが行うと、非難されるというのは、やや公平性に欠くのではないかと、素朴な疑問が生じてくる。

もちろん中国という国が、世界からみれば、まだ特殊な国家であることは考えておかなければならない。アリババが他のIT企業と同じように、製品の改善のために情報収集を行っていたとしても、その収集された情報が国家機関によって、別の政治的な目的のために利用されるということが起こりかねない体制になっていることも、また事実だ。

問題は利用者の同意を明示的に得ているか、プライバシーは保護されているか、収集された自分の情報を自由に閲覧できるか、収集情報はきちんと管理されているかなのだ。「個人情報を収集」という非難の背景には、純粋に技術的な理由ではなく、この例のように政治的・経済的な理由が大きく絡んでいる。


インドの携帯電話販売店の様子。vivoは中国の携帯電話メーカーで、中国製スマートフォンは性能がよく、価格も安いことから、インドでも大きなシェアを握っている。

ニュースで学ぶ中国語

 
瀏覧器(liulanqi):ブラウザー。瀏は水がさらさらと流れる様子。瀏覧で、ざっと目を通す(ブラウジング)の意味。中国でも、Chrome、Firefoxなども使われているが、中国製ブラウザー(百度、360、QQなど)も多く使われている。




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