自動で犯人を見つけて警察に通報する中国の監視カメラシステム

牧野武文

October 16, 2017 08:00
by 牧野武文

米国のテレビドラマ『24』に登場するCTU(Counter Terrorist Unit=テロ対策ユニット)は、街頭の監視カメラに侵入し、テロリストの姿をいったん補足すると、次々と別のカメラを使って追尾をしていくシーンがある。広東省の深圳を始めとする各都市で、このような監視カメラ追尾システムの試験運用が始まったと金羊網が報じた

大量の映像を監視する手間

このシステムは、クラウドを利用して監視カメラ映像を統合し、顔認識技術などで、対象の人物を次々と追尾していくシステムだ。

中国各都市の街頭には、大量の監視カメラが設置されている。しかし、それは防犯目的ではなく、交通管理目的のものが大半だった。渋滞状況をチェックし、歩行者や自転車の多い場所では、危険な行為をする人間を見張るのも目的だった。しかし、カメラが増えれば増えるほど、それをチェックする人員も必要になっていく。深圳市のメーカー、佳都新太科技社は、複数のカメラをクラウドで統合して、人工知能技術を応用した自動監視システムが必要になっていくと考え開発した。

佳都新太科技社は広東省の各警察と共同開発をする中で、警察側から、指名手配犯を追尾システムとして利用できるのではないかという話が出た。そのアイデアを取り入れ、広東省内の広州、深圳、珠海、仏山、汕尾、梅州などの各警察での試験運用が始まっている。


深圳市のメーカー佳都新太科技社のWebサイト

容疑者を自動で特定して警察に通報

金羊網は佳都新太科技を訪問し、実際のシステム運用の様子を取材した。監視カメラには地下鉄の駅のごく普通の情景が映し出されていた。しかし、突然、アラートが発せられた。このシステムは監視カメラに映った人物の顔認識を行い、顔の映像を公安部が保有する身分証データベースと照合、個人を特定している。

さらに、公安部保有の指名手配犯データベースともチェックしている。集材中になったアラートは、この監視カメラに指名手配されている詐欺犯が映ったことを示すものだった。

容疑者がカメラのフレームから外れると、今度は別の監視カメラの警告音が鳴った。容疑者が移動して別のカメラに映ったのだ。このアラートは、所轄の警察にも送信されている。最初の発見からわずか5分後、二人の警官がやってきて、容疑者に職務質問を行い、容疑者を警察署に連行していった。佳都新太科技によると、現在の認識正解率は70%程度だという。監視カメラ映像が不鮮明なものが多いのが原因だが、それでも警官が急行し職務質問をすれば、大いに犯罪捜査に役立つはずだという。

服装や髪型、動作からも判別

このシステムで認識されるのは、顔だけではない。人物を指定すれば、服装、髪型などの特徴、さらには歩き方、手足の動きといった動作的特徴までを、人工知能で分析、自動追尾をする。ある店舗に入った強盗の店内監視カメラの映像から、犯人の特徴を自動解析し、他の監視カメラを使って自動追尾。犯人は、人混みの中に紛れ込もうとしたが、警官が急行して逮捕に至ったという例もある。

また本来の交通監視システムとしても、自動解析が大いに役立っている。交通事故が発生した場合、自動車に自動でズームし、乗員の人数、怪我の状態を自動解析し、救急チームに情報を渡す。また運転手の映像解析は別に行われ、顔認識から公安部所有の身分証データベースと照合、個人情報を特定し、さらに動作から飲酒をしているかどうかも判別をする。

広州市では、駅、地下鉄、バスターミナルなど、防犯重要地点に、顔認識が可能な解像度を持つ監視カメラ200台を新設し、本格運用に向けて準備中だ。中国版CTUが生まれようとしている。

ニュースで学ぶ中国語

 
黒名単(heimingdan):ブラックリスト。中国では全員が顔写真付きの身分証を登録することが義務付けられていて、顔写真を含む個人情報は公安部を始めとする行政機関が自由に利用できる。この身分証がないと、行政サービスを受けられないだけでなく、就職、ホテルの宿泊などもできない。このため、ブラックリスト方式は効果があがる。

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