中国百度の無人自動運転車に交通違反疑惑。責任をとるのは誰?

牧野武文

September 4, 2017 08:00
by 牧野武文

無人自動運転車というとグーグル(開発部門は独立して現在ウェイモーとなっている)が有名だが、そのライバルとなっているのが中国の百度(バイドゥ)だ。百度では、すでに北京市などで一般の自動車に混ざって無人走行試験を行っている。ところが、この無人自動運転車が交通違反をしていたのではないかという疑惑を『北京青年報』が報じた。

百度の自動運転

たびたび話題になる自動運転車だが、無人自動運転(ドライバーレス)と運転支援車(ドライブアシスト)が混同されて報道されている傾向がある。日本の多くの自動車メーカーが開発をしているのはあくまでも運転支援。運転は人間が行い、自動運転技術を応用することで、運転の楽しみ、安全といった付加価値を高めるのが狙いだ。完全自動運転を目指すことを公言しているのは日産だが、それも「法整備の整った国から投入していく」という世界戦略の一環だ。

現在、明確にドライバーレスを目指しているのは、ウェイモー(グーグル)とテスラ・モーターズだが、海外のメディアでは、もうひとつ中国IT企業大手「百度」の名前が挙がる。

ウィエモーやテスラと異なり、百度は開発がどの程度まで進んでいるのかを積極的に公開しないので、どの技術レベルにあるのかは不明なところも多い。しかし、中国政府が戦略的技術として後押しをしていることから、膨大な量の市街地走行実験を行っていると推測され、この点で、ウェイモーやテスラよりも有利だとも言われている。

試験走行の映像で交通違反!? 

百度の自動運転AIプラットフォームは「アポロ」と名付けられている。オープンプラットフォームにしていることが特徴で、すでにフォード、ダイムラーといった自動車関連企業、マイクロソフト、インテル、NVIDIAといったIT関連企業が参加をしている。

百度と独ボッシュが共同開発した自動運転車。百度が開発したアポロプラットフォームは、オープンブラットフォートとなり、多くのグローバルな自動車関連企業、IT企業がこのアポロ計画に参加している
(写真はPhoenix New Mediaより)

7月5日に北京国家会議センターで開催された百度AI開発者会議で、このアポロの市街地試験走行の映像が公開された。北京市の第五環状線を、一般の自動車の中に混ざって走行するというもので、助手席には李彦宏(り・げんこう。ロビン・リー)CEOが座り、レポートをするというものだった。

北京第五環状線は、北京市を走る環状道路の最も外側のもので、比較的渋滞は少なく、以前は有料の高速道路であったため、道路環境も整備されている。とは言え、一般車が走行する中での走行試験は、会場の観客を沸かせた。

しかし、映像の中で交通違反をしている場面が見られ、ネットユーザーの間で話題となり、北京市の交通管理部門も調査を行うと表明する事態になっている。

複数の交通違反が発覚

交通違反だと指摘されたのは、車線変更禁止区間での車線変更。中国の道路では、車線の区分線は点線が基本であり、実線部分は車線変更禁止区間(日本の黄色線と同じ)。李彦宏の乗った自動運転車は、この実線部分で悠々と車線変更をしているのだ。これは規定では、200元(約3200円)の罰金と2点の減点になる。

しかも、違反はこれだけではなかった。映像では、車のナンバーがはっきりとは見えないが、江蘇ナンバーで末尾がEであるように見える。そして、カンファレンスでは「昨日の4日に撮影したばかりの映像」と紹介されている。もし、そうだとすると、その日にこの車が走行するのは違反となる。

北京市では、渋滞緩和と排出ガス削減のために、平日の午前7時から午後8時までの間、第五環状線以内の道路走行を、曜日ごとにナンバーの末尾数字で規制している。この日は、末尾が0と英文字のナンバーの車は走行できない日だった。これも違反をすると100元(約1600円)の罰金となる。

北京青年報の記者は、北京市の交通管理部門に問い合わせを行った。すると、交通管理部門でもこの事態を把握していて、すでに調査に入っているという。さらに、交通管理部門では、そもそもが自動運転そのものが現行法では違反となると回答した。百度は2015年から第五環状線で、無人走行試験を行っていると発表しているが、それが事実であれば問題であり、関係部門と法の解釈を巡って協議を行っているとも答えた。記者は、この問題を百度広報に問い合わせをしたが、未だ正式な回答をもらっていない。

百度AI開発者会の様子。上記動画58分から問題の動画流れる

赤い百度自動運転車が、実線部分で画面向かって右側に車線変更する様子がはっきりと映されている。後ろの白色の一般車は、車線変更禁止区間が終わってから車線変更をしている
https://v.qq.com/x/page/y0522p47agn.html より

罰金を払うのは誰?

中国政府が百度などの自動運転車技術を強力に後押ししていることははっきりとしているが、状況を見ると、個々の走行実験は許可や申請などを行わずに、百度が勝手にやってしまっているようにも見える。

ネット民の間では、自動運転車が事故を起こした場合もそうだが、交通違反をした場合、その罰金を自動運転車のメーカーと運転席に座っている「乗客」のいずれかが支払うべきなのか、誰の免許から減点をすべきなのか、議論を呼んでいる。

ニュースで学ぶ中国語

 
無人駕駛汽車(wuren jiashi qiche):自動運転車、ドライバーレスカー。駕駛は操縦、汽車は自動車の意味。日本の多くのメーカーが目指している運転支援車は、智能汽車(zhineng qiche)と呼ばれ、明確に区別されている。




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