中国で大人気ゲーム「王者栄耀」をプレイしたい小学生がペアレンタルコントロールを続々と突破

牧野武文

August 28, 2017 11:00
by 牧野武文

スマートフォンゲーム「王者栄耀」(おうじゃえいよう)の勢いが止まらない。アカウント数は2億件を超え、1日あたりのアクティブユーザーは8000万人だ。月の売り上げも30億元(約500億円)を突破し、課金売り上げでPokemon Goを抜いた。このゲームは「小学生が勉強をそっちのけでゲームに熱中している」として、社会問題にもなっている。開発元のテンセント(騰訊)では、小学生に対してプレイ時間の制限を設けるなど対策をしているが、小学生たちは次々と突破してしまい、効果が上がっていないとTechWebが報じた

収益構造は「Pay to Fun」

王者栄耀は、テンセントが2015年末にリリースしたスマートフォンゲーム。ネット上で5人までのチームをつくり、敵陣地にある塔を破壊するというバトルゲーム。登場するキャラクターは、三国志や水滸伝、項羽、劉邦、孫悟空、李白、武則天、チンギスハンといった中国伝統のキャラクターから、宮本武蔵や『ザ・キング・オブ・ファイターズ』の不知火舞など様々だ。自分が好きなキャラクターを選んで、戦闘で得たり、実際のお金で購入したコスチュームを着せ、個性を出すことができる。

この王者栄耀が大ヒットした要因は、無課金でもフルに遊べる仕組みにしていることだ。課金が必要なのは、キャラクターを飾るアイテムなどが主体で、それを買ったからといって、ゲームが有利になるわけではない。バトルを楽しみたいだけなら、無課金でまったく問題ない。

日本のスマホゲームは、有料アイテムを購入することでゲームが有利に進められるPay to Winの構造になっているものが多い。そのため、ゲーム内のランキング上位者はほとんどがヘビー課金ユーザーで占められている。

ところが、この王者栄耀もそうだし、海外の多くのゲームが、ゲーム自体は無課金で進められるようにし、キャラクターのコスチュームなどのゲーム進行とは無関係の有料アイテムで収益を上げるPay to Funの構造になっている。この方が、ユーザー数を増やしやすく、アクティブユーザーの比率を高めることができ、なおかつゲームの寿命が伸びる。ゲームのライフタイム収入では、こちらの方が高くなるという考え方だ。

こうして、わずか半年で、世界でもトップクラスの収益を上げるスマホゲームとなった。調査会社App Annieの調べによると、2016年の世界の売り上げランキングで、Pokemon Goを抑えて、8位にランクされている。

特に未成年に大人気であり、テンセントの発表によると、12歳以下は4.78%、13歳から17歳が18.53%であるという。ただし、未成年が成人だと偽って登録しているケースも多く、この数値は低すぎるという指摘もある。


王者栄耀の公式サイト。日本人にとってはさほど魅力を感じられないゲームだが、中国人には親しみやすいキャラクターが多数でてているため、中国では大人気スマホゲームとなっている

あまりにも人気のため規制が入る

過熱ぶりの一方で、問題も続出している。大きな社会問題となっているのが、「子どもが王者栄耀で遊んでばかりいて、勉強をしない」というものだ。

それだけでなく、事件事故も相次いで報道されている。
・11歳の男の子が、父親の銀行カードを盗んで、1万元を課金。
・13歳の男の子が、王者栄耀で負けて、スマホを破壊し、屋上から飛び降りた。一命をとりとめた後、入院中に、再び新しいスマホで王者栄耀を遊び始めた。
・学校に行くのをやめて、働きたいと訴える中学生が続出。目的はスマホを買って、王者栄耀をするため。
・17歳の男子が、40時間連続で王者栄耀を遊び、意識不明になって救急搬送。脳梗塞と診断された。
このような事件が、毎日のように報道されている。

テンセントでは、この問題に対策をとった。今年2月に「騰訊成長守護プラットフォーム」を開設した。これは、王者栄耀を遊ぶのに必要なSNS「QQ」「WeChat」のアカウントを家族で紐づけることができるサービスだ。親のQQアカウントには、子どもが王者栄耀で遊んだ時刻と時間が通知される。

また、5月からは実名登録制を導入。ゲーム内で実名が表示されることはないが、ゲームアカウントを作成するときに、身分証の番号などを入力しなければならなくなった。これで年齢を判断し、未成年の場合にはゲーム内課金額に上限を設けるなどの制限を行った。このプラットフォームにはすでに70万家族が登録をしているという。

さらに7月4日からは、12歳以下は1日1時間、17歳以下は1日2時間にプレイ時間を制限をし、夜9時以降はアクセスができないようにした。これだけの対策をしたことにより、王者栄耀問題は解決するかに見えた。

制限を突破する子供たち

しかし、そうではなかった。子どもたちは、大人が考えるよりもずっと頭がいい。今度は、テンセントの制限を突破する小学生が大量に現れて、これが社会問題となりつつある。

やり方は簡単だ。身近な大人の身分証のコピーを手に入れて、これを利用してSNS「QQ」のアカウントを作成し、これに基づいて王者栄耀のアカウントをつくるだけだ。QQは1人でつくれるアカウント数に制限を設けていないため、気軽に身分証を使わせる大人もいるし、悪質なことに子どもからいくらかのお金をとって、身分証を使わせる大人もいるという。また、親の身分証をこっそり盗み見て、それでアカウントを作ってしまう子どもも多い。

またネットでは成人の身分証情報、QQアカウントなどの売買も始まっており、想定される購入者は王者栄耀を無制限に遊びたい未成年だと考えられ、かえって子どもをアンダーグラウンドの世界に接触させてしまうことになり、より悪質な犯罪に巻き込まれる危険性を指摘する専門家もいる。

テンセントの王者栄耀開発チームは、このような問題に対して、さらなる対策を取ることを公表している。ひとつは、ひとつの身分証での複数アカウント作成を禁止する。もうひとつは、身分証情報に記載された居住地とアクセス地点を照合し、異なる場合はアカウントをいったん凍結する。凍結を解除するには、携帯電話番号にショートメッセージで送られる検証コードを入力させるなどして、他人の身分証を利用できないようにする。

しかし、この対応策を発表した途端、未成年ユーザーが激減することを予想して、テンセントの株価が一時的に下落するなどの事態も起きていて、舵取りが難しい局面に差し掛かっている。


成長守護プラットフォームの画面。親のスマートフォンに、子どもがゲームで遊んだ時刻と時間が表示される。
(画像はTechWebより)

ニュースで学ぶ中国語

 
身分証(shenfenzheng):身分証。人民のほとんどすべてが18桁の数字で管理をされている。希望者のみ交付される建前だが、公的機関の手続きには提示が必要なため、ほとんど全員が取得をしている。住所コード6桁、生年月日8桁、連番3桁、検証コード1桁という構成であるため、居住地確認、年齢確認にも使われる。




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