ハイテク化する中国の入試カンニング術

牧野武文

August 3, 2017 08:00
by 牧野武文

中国で、毎年6月7日、8日に行われる全国大学統一入試「高考」(ガオカオ)。今年から、カンニングが発覚をすると最高で懲役7年と厳罰化がされた。それでもカンニングはまったく減らず、最近ではハッカーを利用する傾向が顕著になっている。『澎湃新聞』の報道によると、河南省だけで6件のカンニングが摘発された。また看護師資格試験では、試験会場でカンニングの摘発が行われ、200人以上の受験生が拘束され、取り調べを受けたという。

ハッカーがテキスト問題を狙う

高考の問題作成は、出題者を隔離して外部との連絡を禁止し、密室状態で行われる。一般の資格試験などでは、数人の問題作成者がSNSで連絡を取り合いながら作成するのが普通だ。そのためクラウドサービスなどに作成途中の試験問題などが保存されている可能性があり、これをなんとか事前入手しようとダークサイドハッカーが暗躍をしている。

6月5日、河南省公安は資格試験などでサイバー犯罪者集団が事前に試験問題を入手するために不正アクセスをしたとして、5つの事件で合計16人のサイバー犯罪者を逮捕したと公表した。

また、試験問題を事前に入手したので、それを3科目分、2万元(約33万円)程度で販売すると称して、お金を騙し取ろうとした詐欺犯も逮捕されている。

小型イヤホンと消しゴムを使ってカンニング

5月20日、21日に行われた全国看護師資格試験では、鄭州公安が試験会場で、カンニング集団を一斉摘発し、カンニングを手伝った犯人4人と、受験生200数名を逮捕した。犯人からはカンニング用のイヤホン、消しゴム400個、答えを送信するための簡易携帯基地局4台、解答を送信していた車両2台を押収。また試験会場にいた受験生からカンニング用イヤホン、消しゴムを36個押収した。犯人たちは、このカンニングで50万元(約800万円)の利益を上げていた。

ハイテクカンニングで最もよく使われるのは、小型イヤホンと消しゴムに偽装した受信機だ。これに簡易携帯基地局から、音声やショートメッセージで答案を送信する。イヤホンは、耳の中にすっぽりと入ってしまって、外からはほとんど見えない。取り出す時は強力磁石で耳の穴から抜くのだという。奥歯の奥にあてる骨伝導式の音声受信機もよく使われる。身体検査を実施されるなど、追い詰められた時は、飲み込んでしまえば、証拠が隠滅できることから好まれているのだという。

また、消しゴムに偽装した受信機もよく使われる。簡易携帯基地局から受信したショートメッセージを30秒間表示するというものだ。300元(約5000円)程度の制作費で製造できるが、だいたい1万元(16万6000円)ほどで売れることから、製造業者は無数にあるという。

もちろん、試験会場側も対策を取っている。会場に入る前に、金属探知機による持ち物検査はごく当たり前のことになっているし、会場全体に携帯電波を無効にする妨害電波発生装置を設置するところも増えている。

液晶モニター付き偽装消しゴム
消しゴムのカバーをつけて、机の上で使う
https://news.cnblogs.com/n/209827/ より

カンニング用イヤフォン。耳の穴の中に入れてしまうと、外からはわからなくなる
出す時は、強力磁石でくっつけて出す
https://news.cnblogs.com/n/209827/ より

カンニングで懲役刑

取締も進んでいる。昨年の全国修士課程入学試験では、6名の学生が某大学のMBA(経営学修士課程)を目指して、ハイテクカンニングを行い、発覚、逮捕された。今年の6月7日に、広州市海珠区法廷は、主犯に1年9ヵ月の懲役刑、罰金6000元(約9万8000円)を言い渡した。

カンニングで懲役刑というのは、日本人の感覚からするとなかなか厳しく感じる。それでも、中国のカンニングは減らない。国際的に通用する有名大学と、地方の大学の格差が年々広がる中で、多くの受験生が有名大学に集中する傾向が強くなり、受験戦争は熾烈さを増している。一方で、一人っ子政策により甘やかされて育った「小皇帝」たちは、辛抱強く何かをやり遂げることが苦手だ。このギャップを埋めるのがカンニングなのだ。カンニング技術も、IT技術の進歩とともに、進化をし続けている。

ニュースで学ぶ中国語

 
作弊(zuobi):チート、不正行為の意味。賄賂、コネの時代が長かった中国では、試験が最も公平な選抜方法をという考え方があり、入学試験だけでなく資格試験も盛んに行われる。

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