賭博のイカサマアプリで大学生が約6億6300万円を荒稼ぎ

牧野武文

July 20, 2017 08:00
by 牧野武文

中国の主要都市では、アリペイ(アリババ)、WeChatペイ(テンセント)のモバイルペイメントが普及し、「無現金社会」がほぼ実現されている。2つのスマートフォン決済手段の普及の大きな原動力になったのが、「紅包」(ホンバオ、ご祝儀)機能だ。この紅包機能を利用したイカサマギャンブルアプリを開発した大学生が、4000万元(約6億6300万円)の利益を上げ、違法アプリによる利益の記録を塗り替えたと、揚子晩報網が報じた。

ご祝儀の「紅包」も電子化

中国では旧正月である春節の時期に、赤い祝儀袋に入れた「紅包」を贈る習慣がある。金額は少ないが、日本のお年玉とは違い、会社の部下や、自宅マンションの管理人、清掃人、よく利用するレストランの従業員など、日頃お世話になっているほとんどの人に配る習慣だ。そのため、50包ほど用意することは珍しくなく、企業経営者となれば100包、200包を用意することが当たり前になっている。

アリペイやWeChatペイは、この紅包を電子化した。SNSで紅包を贈ると、赤い祝儀袋のアイコンが表示され、それを開くとお金を受け取れる。送金額は自分で決めることもできるが、上限を設定し、ランダムに自動設定することもできる。その場合は、中国で縁起がいいとされる数字「8、9」が使われ、縁起が良くない数字「4、5」を使わない額が自動的に設定される。例えば上限を100元に設定すれば、89.89元などが自動設定されて送られるという具合だ。

この紅包にはもうひとつ機能がある。それはグループに対してまとめて送金できる機能だ。例えば、企業が従業員に紅包を贈る場合、企業は従業員が加入しているSNSグループに送金をする。従業員は各自、紅包の取得を行うと、ランダムに決められる額の紅包が受け取れるというものだ。

この機能は、企業の広告宣伝にも利用された。テレビなどの特番で、スポンサー企業が視聴者向けに紅包を贈る。視聴者は、そのスポンサー企業のSNSグループに加入をし、スマートフォンをテレビの前で振ると、ランダムな額の紅包を手にすることができる。これは「紅包大戦」と呼ばれて、電子決済の利用者を増やすことに大きく貢献した。

送金ギャンブル「捕魚」

中国でも、日本と同じようにギャンブルは違法行為だが、現実にはいたるところで賭け事が行われている。カードゲームや麻雀などが多い。この紅包を利用したギャンブルも盛んで、特に「捕魚」(ブーユー、魚とり)と呼ばれる遊びが流行していて、専用のアプリも数多く配信されている。

「捕魚」のやり方は、まず親が一定額の紅包を参加者グループに送る。この時、秘密の地雷数字を決めておく。例えば、200元をグループに対して送り、秘密の地雷数字を5にしたとする。子は、順にこの場に出したお金から、金額がランダムに自動設定される紅包をとっていく。これが例えば、78.8元だった場合、そのお金は自分のものになる。しかし、例えば、38.5元のように、末尾が地雷数字と一致した場合は、親に対して、設定額の200元を支払わなければならなくなる。このような判定やお金のやり取りを自動で行ってくれる捕魚アプリを使って遊ぶのが一般的だ。

親は誰か1人が地雷数字を踏んでくれれば、損はなくなり2人以上が地雷数字を踏んでくれれば大きな儲けになる。子は、1/10の確率で地雷数字を踏んでしまうと大損だが、9/10の確率で、紅包を受け取り、その金額分を儲けることができる。親から見ても、子から見ても、儲けられそうに感じられるところがミソだ。

イカサマアプリでボロ儲け

江蘇省泰州(たいしゅう)市に住む王元と李鳳(ともに仮名)の夫婦は、定職にもつかず、毎日ギャンブルを楽しんでいた。この紅包を使った捕魚ギャンブルにはまったが、あり得ないほど負け続けた。そこで夫婦はなんとかしようと、ネットを検索して、捕魚ギャンブル用のアプリ「ゴッドファーザー」を見つけた。一般の配信サイトにはないアプリで、成都三哥と呼ばれる人物から120元(約2000円)で直接売ってもらった。脱獄したiPhoneでしか動作しない、イカサマ捕魚ギャンブルアプリだった。

仕掛けは単純で、親が定めた秘密の地雷数字を把握してしまうというものだ。子の時に紅包を取得し、金額が決まった時に地雷数字に当たっていなかったら、そのまま紅包を取り、地雷数字に当たっている時は紅包を取らずにパスをする。端からは、イカサマをしていることが露見しづらい。子の時は、損をすることは絶対になく、親の時はイカサマなしだが、損は紅包に設定した金額が上限で、なおかつ大きく儲けるチャンスがある。この夫婦は、このゴッドファーザーアプリを使って、短期間に大金を稼いだ。

それだけでなく、この夫婦は成都三哥からこのアプリの使用権(一定期間利用すると、追加料金を支払わないと利用できなくなるサブスクリプション方式になっている)を120元で仕入れ、ネットで300元から400元で販売し、2ヶ月で4万元(約65万円)近い利益も得た。

イカサマアプリの開発者

今年2月、泰州市警察姜堰(きょうえん)分局のネット安全部隊民警のネット巡視活動から、このゴッドファーザーによるイカサマギャンブルの問題が浮かび上がってきた。姜堰公安分局は、賭博罪と計算機情報システム破壊罪の容疑で、捜査を始めた。

3月15日には、王元と李鳳の夫婦を逮捕し、その取り調べから、販売元の成都三哥と呼ばれる人物が補足された。姜堰公安分局は、成都三哥の背後に、大掛かりな違法アプリ開発チームがいると見て、専従チームを組織し、捜査をさらに進めた。そして、成都三哥は、田某(仮名)という女性であり、その背後に「B哥」「顔値」「炉裂」とネットで呼ばれる3人がいることがわかった。

5月25日に、姜堰公安分局は9チーム、36名の警官を、福建省、江西省、山東省、広東省などの6地点に派遣し、逮捕作戦を展開、12名の容疑者を逮捕した。

捜査員が驚いたのは、ゴッドファーザーを開発したエンジニアは、鄭某(仮名)という21歳の大学生であったことだ。鄭某は中学生の頃からプログラミングが好きで、大学では計算機科学を専攻した。その時、ネットのギャンブル捕魚のことを知り、イカサマアプリ「ゴッドファーザー」を開発した。

鄭某は、ネットで知り合いにゴッドファーザーを無料で使わせていたが、ある同級生がそれを使って金儲けをすべきだとアドバイスした。鄭某は同意して、ゴッドファーザーを、サブスクリプション方式に改造した。つまり、利用料を支払うと一定期間使えるようにしたのだ。鄭某と同級生は、さらに5人の販売人を集め、彼らに1権利120元で販売をした。5人から使用権を購入した人物たちは、さらに別人に価格に利益を乗せて転売し、最終的に4階層の販売ネットワークが構築され、末端価格では300元から400元の価格になっていた。

公安の取り調べによると、昨年7月以来、13万件の利用権が販売され、犯罪集団は1500万元(約2億4800万円)を超える利益を上げていた。第2層以下の販売人は、全国各地に点在し、第2層は約20名、第3層は約300名以上いたと見られ、販売人たちの利益を合計すると4000万元(約6億6300万円)を超えるという。

姜堰公安分局は、主犯格の容疑者の取り調べを続け、販売ネットワークの全容解明を急いでおり、今後は販売人たちの検挙を行う予定だ。

ニュースで学ぶ中国語

 
紅包(hongbao):ご祝儀。旧正月だけに限らず、祝い事があるときに、商店主が使用人に配ったのがそもそも。赤い祝儀袋に入れて渡す。額は少ないが、8元、88元など縁起のいい額にすることが多い。アリペイ、WeChatペイには、この紅包をSNS経由で送る機能がある。




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