中国湖南省で偽iPhoneが3トン発見される

牧野武文

July 13, 2017 08:00
by 牧野武文

高いからこそ偽物が出現

中国においてiPhoneは高級なスマートフォンだ。現在Apple Storeの公式価格では、iPhone 7が5388元(約8万7000円)から、iPhone 7 Plusが6388元(約10万3000円)からになっていて、利用をするにはさらにキャリアとの契約も必要だ。例えば大手キャリア中国移動通信(China Mobile)では、データ通信無制限+通話500分/月の契約が月額188元(約3000円)。日本と比べて、通信料金は格段に安いものの、本体価格は変わらない。安いスマートフォンであれば、500元(約8100円)以下のものがたくさんあることを考えれば、まだまだ普通の人にとってiPhoneは高嶺の花だ。

そのため低価格AndoroidスマートフォンにiOS風の画面を乗せた「偽iPhone」の販売が途絶えることがない。中国湖南省で、偽iPhone製造業者が摘発された。倉庫が家宅捜索され、大量の偽iPhoneが発見されたと『華声在線』が報じた。

iPhoneが格安で買える

今年2月、湖南省永州市で金物屋を営む店主に、一通の広告メッセージが送られてきた。内容はiPhoneを低価格で販売するというもので、これは電話番号の抽選により当選した特典だというものだった。店主は、ありがちな広告メッセージのひとつだと思って相手にしなかったが、そのことを知人に話すと、知人はもったいないと言う。最も容量の小さなiPhoneでも正規価格は5388元(約8万7000円)なのに、そのメッセージでは1600元(約2万6000円)で購入できるというからだ。

その時、店主の背中を押したのがメッセージ内の宣伝文句だった。「支払いは到着後に。15日以内であれば、返品可。正規保証書つき」というものだった。これだったら、まずは現物を手にして、気に入らなかったら返品すればいいと安易に考えてしまった。申し込むと2日後にiPhoneが到着した。

バッテリーケーブルがささらない

この店主はiPhoneを手にするのは初めてだった。到着したiPhoneを使ってみると、軽快に動作する。どこにもおかしいところはないようだった。店主は「これはいい買い物をした」と考え、代金の1600元を送金した。

ところが翌日になって、店主は慌てることになる。バッテリーが減ってきたので、充電をしようとケーブルを手にした。だがiPhone本体のどこを探しても、充電ケーブルが挿さりそうな穴が見つからないのだ。iPhoneに詳しくない店主は、近所でiPhoneを扱っている携帯電話ショップに行き、どうやって充電をしたらいいのかを聞きにいくことにした。すると店員は「これはiPhoneではないですよ」と言う。この時になって、店主はようやく偽物をつかまされたことに気がついた。返品期限の15日間はまだ過ぎていないが、返品をしたところでお金は戻ってこないだろう。

同じく永州市で同じ偽iPhoneを買ってしまった人がいたが、その人はスマートフォンに詳しく、お金を支払わずに済んだ。「見た瞬間にiPhoneではなく、安物のAndroidスマートフォンにiPhone風のデスクトップを乗せているだけだとわかりました。設定情報に記載されている生産地の場所と、パッケージに記載されている生産地も違っていました」。

押収記録は台数でなく重量で

永州警察では同様の通報が相次いだことから、今年2月から捜査を始めた。すると湖南省だけでなく、中国各地で同様の事件が起こっていることがわかり、背後には同じ詐欺犯罪集団が存在することが判明した。詐欺犯罪集団は、深圳市と湖南省永州東安県の2ヵ所に拠点を持っていることも突き止めた。

永州警察は深圳市と東安県の2チームに分かれ、同時に家宅捜索を行った。深圳市で主犯を、東安県でネット販売と倉庫を管理している2名を逮捕した。

驚いたのは、押収された偽iPhoneの量だった。倉庫の中に山積みにされ、運び出すために、作業員と数台のトラックを手配しなければならなかった。頭を悩ませたのは押収品の記録作成で、通常であれば、台数を数えなければならないが、数えるのにいったい何日かかるのかすらわからないほどだった。

永州警察は、貴重な警察官の時間をこのような無駄なことに使わせるわけにはいかないと考え、押収記録は台数ではなく重量で記載した。量ってみると、偽iPhoneは3トンあった。

一体偽iPhoneは何台あったのか。永州警察は発表していないが、iPhone 7の重量は138グラムだ。これを元に計算してみると約2万1700台となる。

詐欺犯の3人は、この偽iPhoneを同様の手口で、1400元(2万3000円)から1800元(3万円)で販売し、数ヵ月の間に300万元(約4800万円)を稼いでいた。恐らく2000台弱をすでに販売したことになる。

2万台ほどあった偽iPhoneを数ヵ月でようやく2000台捌くことができた。この分で行けば、あと数年はこの偽iPhoneの商売で儲けられるはずだった。ただし、発覚しなければだ。

6月3日、犯人たちは検察に送られ、現在は裁判が始まるのを待っている。

ニュースで学ぶ中国語

 
山寨(shanzhai):深圳市華強や北京市中関村などの電脳街で、数人で携帯電話やパーツなどを製造販売する小規模ベンチャー。水滸伝に登場する山中の砦が語源で、当初は知的所有権を無視し、模倣品、知的所有権を侵害した製品などを数多くつくっていた。しかし、高い技術力をもつエンジニアも多く、現在では、深圳では華為(ファーウェイ)、北京では小米(シャオミー)などで働く人が増えている。

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