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SNS自殺ゲーム「青い鯨」が中国に上陸

牧野武文

June 12, 2017 08:00
by 牧野武文

ロシア発の危険すぎる自殺ゲーム「青い鯨」(Blue Whale)が、中国にも上陸し、すでに自殺者が出ているという話がSNSでは飛び交っている。警察、教育関係者は厳戒態勢に入り、SNS「QQ」でも、青い鯨ゲーム関係のグループの強制削除を始めたと、北京青年報が報じた

人を自殺に追い込む死のゲーム

自殺ゲーム「青い鯨」は、ロシアの心理学を修めたフィリップ・プデイキンが始めたと言われる。プデイキンが主催するSNSグループに入ると、毎日1つずつ、プレイヤーに「任務」が言い渡される。

しかし、この任務が尋常ではない。「朝4時20分に起きて、ホラー映画を見ろ」「朝4時20分に橋の上に行け」「朝4時20分に高層ビルの屋上に行け」から始まり、「死ぬ覚悟ができたら、太ももにYesとナイフで刻め」「腕にクジラの絵をナイフで刻め」と自傷行為にエスカレートしていき、50日目の最終日には「高層ビルの屋上から跳べ」となり、エンディングを迎える。

任務を実行した証拠写真をSNSにあげることが義務付けられ、脱落しそうになると、参加プレイヤー全員が励ましたり、脅したりして、リタイアを許さない。

プデイキンは、人の心理を操るソーシャルエンジニアリングの達人と言われ、プレイヤーがいかに世の中にとって不要な人間であるかを信じ込ませていく。判明しているだけで15人を自殺まで追い込み、実際にそのうちの10人が死亡した。

青い鯨は、ロシア周辺の東欧諸国に飛び火をし、なぜか次は南米に、そして5月初旬ごろ中国にも上陸をした。

女性の裸が見たいだけ!? 中国版の藍鯨

中国でもすでにSNS「QQ」に藍鯨(lanjing、青い鯨の中国名)関連のグループが相当数あり、参加人数も1グループあたり200人、300人と拡大している。5月15日には、安徽省宣城市涇(けい)県公安が、管内で不審な学生6名に声をかけたところ、この藍鯨の任務の遂行中だったことから補導をし、学校と家族に通知をした。また、広東省湛江(たんこう)市公安は、SNS上で藍鯨グループを主催していた17歳の学生を補導し、SNSグループを解散させた。

自殺まで至った若者がいるかどうかは不明だが、SNSなどではもっともらしく自殺事案が伝えられている(ただし、藍鯨との関係は不明)。

QQでも運営側が、藍鯨関係のグループの削除を始めているが、「420」「LJ(藍鯨の中国語読みの頭文字)」といった、一見無関係に見えるが、藍鯨に参加したい若者からすればすぐにわかるグループ名をつけられるので、打つ手がない状況だ。

この藍鯨ゲームの特徴は、参加者が10代から20代前半の女性が圧倒的に多いということだ。主催者が男性で、参加した女性に命令をして、自殺に導くというパターンが多い。

もうひとつの特徴が、参加するときに、参加する女性の裸の自撮り写真を主催者に渡すことを要求されることだ。「脱落した場合は、写真を公開する」という縛りをかけることで、最後までやり通させることが目的だ。

そのため、本来の藍鯨ゲームではなく、女性の裸の写真を見たいがために、この藍鯨ゲームを主催しているふりをする男性までQQ上に現れている。中には、裸の写真を手に入れるとすぐに「5000元(約8万円)支払わないと、写真を公開する」と脅して、お金をゆすろうとした男性までいて、逮捕されている。

裸の写真を担保に金を貸す

この裸の写真は、裸照(luozhao)と呼ばれ、中国の社会問題のひとつになりつつある。女子学生は、収入がないので、金融機関もお金を貸してくれない。これに目をつけた違法高利貸しが、女子学生を対象に、裸照をカタに高利でお金を貸すということが問題になっていると、光華網が報じている

湖北省武漢の20歳のある女子大生は、家族から毎月1000元(約1万6000元)の仕送りを受けて、大学に通っていた。中国の大学は、原則、学生寮生活なので、食事と住居は確保できているため、月1000元でもじゅうぶんに学生生活を送ることができる。ところが、彼女はお金が足りないと感じ、昨年10月に、身分証を持った自分の裸の写真をカタに、違法高利貸しから5000元を借りた。期日までに利子や元本を入れない場合は、この写真が公開されることになっている。この手の違法高利貸しは、SNSで簡単に見つかり、裸照を送れば、すぐにアリペイなどでお金を振り込んでくれる。その手軽さから、利用する学生が急増しているという。

彼女は、すぐに自転車操業状態となり、他の高利貸しからお金を借りて、返済に充てるということを繰り返した。半年後には約30の高利貸しから総額8万元を借りていた。中には、利息が毎週30%という悪質なものまであり、借金総額は26万元(約419万円)に膨らんでいた。親に事情を話したが、親もそこまでの借金を返す経済力はなく、完全に行き詰まってしまった。結局、彼女の裸照は両親、友人、大学事務局に送付されてしまった。

居場所のなくなった彼女は、親とともに夜逃げをし、上海市のどこかで働いているという。大学は、警察に協力を求め、違法な貸付を行った高利貸しの逮捕と、上海にいる彼女を探して、学校に戻ってくるように説得することを要請している。

藍鯨ゲームの拡大も懸念されるが、中国の場合、そこに裸照という別の問題が複合してしまっている。

10年ほど前まで、中国の大学生は男女ともに質素の代名詞ような存在だった。富裕層の子弟であっても、大学では周りと同じように質素な暮らしをし、勉学に専念する。それが大学生としての矜持だった。

しかし、SNSとスマートフォンが普及すると、大学生の常識はまったく変わってしまった。眩しいほどに豊かな学生生活をエンジョイしている超リア充の写真がSNSに投稿され、他の学生もそれに刺激されてしまうからだ。富裕層の子弟は、高級外車で大学に通学するのをなんとも思わなくなった。普通の女子学生も、教科書よりもファッション雑誌を読む時間が長くなっている。

その状況の中で、お金を渇望する女子学生がいて、自分の生まれを嘆いて社会に絶望する女子学生がいる。彼女たちにとって、他人に与えられるものは、裸照しかない。裸照は、中国社会の深刻な問題のひとつになっている。

トリミングとモザイク処理がされているが、多くは全身または上半身の全裸写真。手に身分証を持っているのが特徴。利子や元本を期日までに返せないと、この写真が親や知人に送りつけられる(光華網より)。

ニュースで学ぶ中国語

 
藍鯨(lanjing):青い鯨、シロナガスクジラのこと。浅瀬に乗り上げ、集団自殺をするという現象があることからのネーミング。発案者とされるフィリップ・プデイキンはすでに逮捕されているが、青い鯨ゲームは、さまざまな国に飛び火をしている。
 
裸照(luozhao):裸の写真。特に、自分の身分証を手にした全裸写真をいう。女子大生に裸照をカタに高利で金を貸すことが広まり、社会問題になりつつある。




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