中国で市民が市民を通報する「移動監視カメラ」アプリが大炎上

牧野武文

April 3, 2017 08:30
by 牧野武文

中国人民日報は、北京市朝陽区警察が公開した公式アプリ「朝陽群衆」が賛否両論を呼び、公開翌日のSNS微博では200万通以上のメッセージが交換されたと報道した。

アプリが通報ができる

「朝陽群衆」は北京市朝陽区警察の公式アプリ。警察活動などの情報が閲覧できる。問題となったのは「通報」コーナー。通報項目として「幼児誘拐」「指名手配犯」「老人失踪」「違法行為」「遺失物」「その他の通報」という6つがあり、メッセージだけでなく、スマートフォンで撮影した写真、動画も送信することができる。

とくに議論を呼んだのが報奨金の存在だ。事件解決に結びついた通報をした人には200元(約3200円)が支払われる。また、写真、動画も送信できることから、「移動監視カメラではないか」という議論も呼んでいる。

朝陽区警察がこのようなアプリを公開するに至ったのには、この地区特有の特殊事情がある。朝陽区には三里屯(さんりとん)という外国人が多く集まるバーが建ち並ぶ地区があり、以前から「北京で最もおしゃれなナイトライフが楽しめる場所」として国際的にも有名だった。しかし、有名になるにつれて、治安は悪化した。麻薬と売春が横行する危険な街になってしまったのだ。

そこで朝陽区公安、民警、市民の三者が協力をして、地道な浄化作戦を展開し、現在の朝陽区の治安は大きく改善、高級ショッピングモールが建ち並ぶクリーンな繁華街に生まれ変わることに成功した。

スマートフォンを使った浄化活動

今回の「朝陽群衆」アプリは、今まで行ってきた浄化活動の効果をより高める施策のひとつだ。北京第二外国語学院国際放送学院副教授の劉暉(りゅう・き)氏は、こう分析している。「朝陽区の浄化活動の主体は退職した高齢者です。一方で、アプリを利用するのは若者が主体で、アプリを通じて参加してもらうことで、浄化活動を若者の間にも拡大したい狙いがあるのでしょう」。

中国共産党中央辯公庁は、2015年4月に、治安の改善のためには市民の通報による協力をさらに仰ぐべきだという内容を含む「社会治安を強化する体制づくりのための意見書」を公開しており、それに応じて、北京市朝陽区以外にもスマートフォンによる市民通報を積極的に活用する地域が現れてきている。

湖北省武漢市公安では、微信(WeChat)を活用し、「ひとつ通報すれば、50元」運動を展開、市民からの通報を奨励している。市民が「移動監視カメラ」となり、治安改善に協力している。また、山東省寧津県公安も微信を活用しており、昨年12月には、行方不明になった幼児を、市民からの通報でわずか1時間で保護するという成果を上げている。

市民からは冷ややかな反応

しかし、人民日報董絲雨(とう・しう)記者は、現在のところ、「朝陽群衆」に対しては、ネットではからかうような意見が大半だという。「通報者のプライバシーも筒抜けになるんじゃないの?」「どうせ、作っただけで放置しちゃうんでしょ?」「朝陽区でしか使えないって意味ないんじゃん?」のような意見が多いという。

実際、行政系のアプリは問題を抱えている。昨年初めに中山大学行政アプリ研究チームが公開した研究結果によると、70都市の行政アプリを調査したが、公開後1ヶ月以内にアップデートをしたアプリは2割以下で、3ヵ月以内にアップデートをしたアプリが6割。それ以外は、1年経ってもアップデートが行われず放置された状態になっている。アプリ評価でも10点満点で9点以上を獲得しているアプリは、17.61%にすぎず、約3割が極端な低評価だった。

朝陽区公安によると「朝陽群衆」アプリは現在試験運用段階であり、正式運用にはまだ一定の時間が必要だという。

「朝陽群衆」アプリを最初に起動すると、「すべては、市民の市民による市民のための治安活動」という文言が現れる。本当に市民のためのアプリとなるか、市民を監視するためのアプリになるのか、今後も大きな議論を呼びそうだ。


北京市朝陽区公安が公開した「朝陽群衆」アプリ。メッセージだけでなく、写真や動画も送ることができる。事件解決に結びついた通報には200元の奨励金が支払われる。移動監視カメラではないかと大きな議論を呼んでいる(App Storeより)。

ニュースで学ぶ中国語

 
公安(gong’an):中国の警察組織。事件の捜査を主に行う。日本の警察と検察を兼ねたような組織。公共安全の略。その実働部隊が民警(人民警察)。いわゆるお巡りさんたちが所属する組織。この他に、武装をした武警(武装警察)がある。

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