ブライアン・クレブスを襲った史上最大級のDDoS攻撃 (4) Akamaiが匙をなげるまでの2週間

江添 佳代子

October 20, 2016 08:30
by 江添 佳代子

vDOSの首謀者だった2人の青年が逮捕されてから2日後の9月10日、Krebs on Securityに新たな記事が追加された。この記事の中で、クレブスは今回の事件を改めて報じると共に、「9月9日以降、Krebs on Securityは深刻なDDoS攻撃を受けている」と伝えた。

熾烈な攻撃にさらされる

その攻撃パケットには、ご丁寧にも『godiefaggot(死ね、カマ野郎)』というメッセージが埋め込まれていたという。攻撃のタイミングや幼稚なメッセージから想像するに、「お気に入りの玩具(vDOS)を取り上げられたスクリプトキディたちが腹を立てて一斉攻撃を起こした」と解釈するのが自然だろう。もちろん、過去にクレブスから煮え湯を飲まされた別のサイバー犯罪者や、あるいは何らかの意図を持った組織が、この騒ぎに便乗して攻撃に参加した可能性も考えられるのだが。

このときクレブスは、自身が受けているDDoS攻撃に関して「大規模かつ継続的であり、ピーク時には140 Gbpsに及んだ」「この攻撃によってKrebs on Securityは一時的にアクセスできなくなった」「現在はProlexic(Akamaiを母体とするテクノロジー企業)とAkamaiによって守られている」と説明していた。

しかしその後も、彼のサイトを標的としたDDoS攻撃の勢いは増していった。vDOS首謀者の逮捕から2週間後にあたる9月21日、ついにクレブスは「自らが受けているDDoS攻撃」をテーマとした新たな記事を掲載した。その説明によれば、Krebs On Securityは9月20日の夜に「とてつもなく大きなDDoS攻撃」を受けたという。

こういった執拗な攻撃から私のサイトを保護しているAkamaiの技術者たちが力を尽くしてくれたおかげで、その攻撃は失敗に終わった。しかしAkamaiによれば、その攻撃は「過去に彼らが見た最大の攻撃」のほぼ2倍にあたるサイズで、また「これまでインターネットが経験したものの中で、最大の攻撃のひとつ」であるという。

その攻撃は9月20日の午後8時頃から開始され、最初の報告では「665 Gbps」と示された。さらなる分析の結果は「620Gbps」に近い数値となったが、いずれにせよ、それは「通常、ほとんどのウェブサイトをオフラインにするために必要となるトラフィック量」とは桁違いの規模だ。
Akamaiのシニアセキュリティ・アドボケートのMartin McKeay,によれば、同社がこれまでに見た最大の攻撃は、今年前半に記録した「363Gbps」だったという。

サービス停止を決断したAkamai

クレブスは翌22日の朝にも、彼のブログに対するDDoS攻撃が続行していることをTwitterで伝えつつ、彼の支援者に感謝を述べるという余裕を見せた。しかし同日の午後に事態は急変する。その攻撃の規模があまりに大きすぎたため、有料顧客にも影響が及びはじめていることを危惧したAkamaiは、もはや彼のサイトを守り続けることができないと判断し、Krebs On Securityへのサービス提供を中止することを決断した。


支援と連帯感を表現してくれた全ての皆さんに感謝したい。そう、いまも攻撃は続いている。今後もご期待を。


どうやら、しばらくの間KrebsOnSecurityはオフラインになりそうだ。Akamaiは今夜、同社のネットワークから私を追い出そうとしている。

それではまた。楽しかったよ。

そしてクレブスは、そのホスティングプロバイダに今後の攻撃の矛先が回ることがないようにするため、Krebs On Securityを「127.0.0.1」(ループバックアドレス)にリダイレクトするよう依頼した。こうしてKrebs On Securityは一時的な閉鎖を迎えることとなった。このとき、クレブスのツイートには「あんまりな話だ」「Akamaiには失望した」「ブロガー一人すら守れないAkamaiに、世界中の有名企業が守れるのだろうか」などのコメントも寄せられた。しかしクレブスは、その後のTwitterやKrebs On Securityで繰り返しAkamaiを擁護している。


彼らの決定について、あまりAkamaiを悪く思うことはできない。おそらく私は現在、彼らに甚大なコストを負担させている。


皆さんはAkamai/Prolexicを過剰に叩いているが、今回のことが起こるまで、彼らは私に無償でサービスを提供していた。だから先述のとおり、私はまったく彼らを咎めるつもりはない。

誤解のないよう、はっきりと言わせてほしい:私はAkamaiの下した判断に関して同社を責めてはいない。私は最初から無償でサービスを受けている顧客で、Akamaiとその姉妹企業Prolexicは過去4年間に渡り、無数の攻撃を受けてきた私の味方をしてくれた。( 9月25日の「Krebs On Security」より抜粋

Krebs On Securityの復活

このようにして一時的な活動中止を余儀なくされたクレブスだったが、彼は翌24日の夕刻、早くもKrebs On Securityが徐々に再開へ向かっていることをTwitterで告知した。

その告知の翌日にあたる9月25日、Krebs On SecurityはGoogleの「Project Shield」に守られたサイトとして無事に復活を遂げた。再開後のKrebs On Securityに初めて掲載された記事の中でクレブスが訴えたこと、そして彼のサイトを襲った甚大なDDoS攻撃について明かされはじめた事実などについては、次回以降にお伝えしたい。
 
その5に続く




江添 佳代子

江添 佳代子

ライター、翻訳者。北海道生まれ、東京育ち、カナダ・バンクーバー在住。インターネット広告、出版に携わったのち現職。英国のITメディア『The Register』のセキュリティニュースの翻訳を、これまでに約700本以上担当してきた。
THE ZERO/ONEの記事を中心に、ダークウェブをテーマにした『闇ウェブ』(文春新書)の執筆に参加。

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