米選挙戦中のヒラリーに痛手「WikiLeaks」アサンジがメール3万通を暴露

江添 佳代子

March 29, 2016 10:30
by 江添 佳代子

この数年、あまり目立つことのなかった「WikiLeaks」創始者のジュリアン・アサンジに関するニュースが、今年2月初めから再燃している。英国のエクアドル大使館に亡命してからの彼は、一歩でも大使館の外に出ると英当局に逮捕されるため、2012年6月から現在まで3年半以上にわたって館内に閉じこもってきた。

「自分は恣意的な拘束状態に置かれている」として国連に調査を求めていたアサンジは、「私の主張が認められないのであれば金曜(2015年2月5日)、英警察による身柄拘束を受け入れる」と表明していた

この発言により、エクアドル大使館の周辺には「ついにアサンジが逮捕されるのか?」と考えた大勢の報道陣、支持者や野次馬が集まったが、国連の作業委員会は2月4日、「アサンジのエクアドル大使館滞在は、スウェーデンと英国の両政府による『恣意的な拘束』にあたる」との見解を示したため、彼の逮捕劇が報じられることはなかった。ただし両国は現在、この委員会の判断に対して見直しを要求しており、「(委員会の発表によって)何も変わることはない」とコメントしている。

今回は、このアサンジの亡命やWikiLeaksの歴史にまつわる話ではなく、「現在のアサンジが米大統領選に関してどのような発言を行っているのか」をお伝えしたい。より端的に言えば、再び世界の注目を浴びはじめているアサンジが今、どれほど強力にヒラリーを非難しているのかという話題だ。

過激な言葉でヒラリーを批判するアサンジ

国連の作業委員会の発表が報じられてから数日後の2月9日、アサンジは「A vote today for Hillary Clinton is a vote for endless, stupid war(いまヒラリークリントンに投票するのは、終わりなき愚かな戦争に票を投じることである)」と題した記事を投稿した。その記事には、過激なタイトルに負けぬほど強い表現が数多く用いられている。これまで何万通ものヒラリーのメールにアクセスしてきたと語るアサンジは、記事の中で次のように説明した。(以下抜粋、著者翻訳)

「ヒラリーはイラク(との戦い)に賛成票を投じただけではなく、彼女自身のイラクを作り出してきた。リビアは『ヒラリーのイラク』である。大統領になれば、彼女はさらに多くのことを行うだろう」

「判断力を欠いたヒラリーは、テロを拡散する『限度なき戦争』へと米国を推し進めている。彼女のパーソナリティは彼女の劣悪な政策決定と相まって、直接的にISISの発生に貢献してきた」

「ペンタゴンの将軍たちは、リビアの破壊に反対していた。彼らはヒラリーの『戦後の計画』に安全性がないと感じていた。(しかし)ヒラリーは、彼らの手に負えなかった。リビアは破壊され、ISISの温床となった。リビアの武器庫から略奪された数百トンの武器は、シリアのジハードの戦士たちに譲渡された」

「リビアの悲劇から何も学ばなかったヒラリーは、シリアで同じことをしようとしている。『ヒラリーの戦争』はテロを増長させ、罪のない数万人の一般市民を殺し、また中東の女性の人権を数百年分、後退させた」

「ヒラリーの問題は、単に彼女が『ウォーホーク(War Hawk=タカ派)』だというだけにとどまらない。彼女は人を殺すことによって、見苦しく感情的な慌ただしい需要を得ようとする、邪悪な判断を行うウォーホークだ」

「軍隊はおろか、銃器の販売店ですら、彼女に近づかせるべきではない。彼女が米国の大統領になるべき人物でないことは明らかである」

このアサンジによる主張は、またたくまに 『Daily Mail』 『RT』(旧称:ロシア・トゥデイ)などの大手メディアで大々的に伝えられた。

起こるべくして起きた2人の対立

これほど強いメッセージをアサンジが発表した背景には、「あらゆる事実を白日のもとに晒したい」という彼の信念を超える事情があったかもしれない。ヒラリーとアサンジの敵対関係は、いまに始まったものではないからだ。過去にもヒラリーやオバマ政権に関する機密文書を公開してきたアサンジは、それらの暴露が米国の大統領選挙に影響していないと感じたからこそ、露骨な表現で彼女を非難しはじめたとも受け取れる。

実は半年以上前に、このような事態を予測していた人物がいた。THE ZERO/ONEでも過去数回にわたって言及してきたMEGAUPLOADの創始者、キム・ドットコムである。

ドットコムは2014年12月、自らのツイッターアカウントで「僕は海賊じゃない。(中略)僕はインターネットの自由のために戦う戦士だ。そして2016年には、ヒラリーにとっての最悪の悪夢になる!」というツイートをしていた

そして2015年5月、ブルームバーグによるインタビューで、このツイートについて問われたドットコムは、自身がオバマやヒラリーを支持していると表明しつつも、「僕は透明性をもたらしたいと思っている」と語り、「でも(最悪の悪夢になるのは)僕よりジュリアンだろうね。彼は情報にアクセスできるから」と答えていた。ちなみに「なぜ(他の候補者ではなく)ヒラリーがアサンジに狙われているのか?」とインタビュアーに問われたドットコムは、「ヒラリーがジュリアンを憎んでいるからさ」と回答している。このインタビュー動画は現在でもブルームバーグのページで視聴することができる。

ヒラリーに対する執拗な攻撃

アサンジによるヒラリーの非難は、彼女を「ウォーホーク」と呼ぶだけでは終わらなかった。その後もWikiLeaksは、ヒラリーに関する新たな情報の公開を続け、さらにヒラリーが送受信したメール、および添付ファイルを簡単に検索できるアーカイブのサービスを2016年3月16日に開始した。ここで閲覧できるのは、ヒラリーが国務長官を務めていた頃の3万通を越えるメールで、2010年6月30日から2014年8月12日の間に送受信されたものである。

なにしろ情報量が膨大なので、全てを一度に伝えることは不可能だ。現在、米国では数々のニュース媒体が数日おきに、それらの情報の一部を新しい話題として報じている。たとえば、この数日間だけでも以下のような記事が掲載されている。
 
・オバマ政権が「イスラエルを助ける最善の方法」であるとしてシリアの内戦を焚きつけたことを示すメール(文書番号C05782501)の内容を伝えた記事
THE INQUISITR NEWS 3月24日 Hillary Clinton Email_ Overthrow Assad, Destroy Syria For Israel
 
・フランスと英国がリビアの石油を巡って争っている間、ヒラリーがカダフィを打つ手助けをしていたことを示すメール(文書番号C05794498の内容を伝えた記事
MintPress News 3月25日 Wikileaks Hillary Clinton Helped Topple Gadhafi While France & UK Fought Over Libya’s Oil

また、これらの開示文書の扱いに関してWikiLeaksがFaceboookを非難している点も注目するべきだろう。WikiLeaksのツイッターは3月18日、次のようなツイートを発信した

「親愛なるFaceboookへ。ヒラリークリントンのメール開示に対する検閲行為を中止せよ。本当に。止めろ。技術的な言い訳は成り立たない」


このツイートには、FacebookのユーザーがWikiLeaksのページ(ヒラリーのメールを検索できるアーカイブページ)にアクセスしようとした際、エラーが表示されるという現象のキャプチャ画像が添えられている。同ツイートには「ザッカーバーグの検閲下で言論の自由は死んだ」などのコメントが寄せられており、また、この現象はすぐさまニュースとして取り上げられる事態となった。

サンダースの後押しに繋がるか?

この3万点を超えるメールによって公開されたヒラリーの数々のスキャンダルは、彼女の支持率を下げることになるだろうか。それは微妙かもしれない。なぜなら、WikiLeaksの発表に関心を寄せる市民(主に、現米国政府への不信感を募らせている若者など)の多くは、このように新たな燃料を投下されるまでもなく、すでにバーニー・サンダースの支持層となっている可能性が高いと考えられるからだ。現時点で誰に投票するべきかを決めていない有権者が、突然「この数年間の米国について何もかもを知りたい」と考え、いまさらWikiLeaksの文書にアクセスするという状況は想像しづらい。アサンジの行動ひとつで米国の浮動票が大きく動き、民主党内の支持率が逆転するほど単純な選挙でもないだろう。

とはいえ、民主党の二番手であるサンダースもまだまだ健闘している。この記事を執筆している最中にも、圧倒的に不利と言われていた彼がアラスカ、ハワイ、ワシントンで勝利したことを伝えるニュースが飛び込んできた。今回、アサンジがもたらしたヒラリーの悪夢が、民主党の候補指名争いに「まさかの結果」をもたらす一因となる可能性も、決して無いとは断言できない。
 
(敬称略)




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