米大統領選「トランプ現象」にAnonymousも便乗

ケロッピー前田

March 7, 2016 11:00
by ケロッピー前田

ドナルド・トランプの勢いが止まらない。

トランプは億万長者の不動産王で、リアリティ番組「The Apprentice」にレギュラー出演して、国民的な人気者となり、彼の決めゼリフ「You’re Fired!(おまえはクビだ!)」は流行語になった。昨年6月に突然、大統領選に名乗り出たかと思えば、「メキシコとの国境に万里の長城を築き、不法移民は本国に強制送還する」と問題発言し、世間を騒がせている。昨年12月2日に、カリフォルニア州サンバーナーディーノでISIS支持者による銃撃テロ事件が起こると「イスラム教徒のアメリカへの入国を禁止する」という趣旨の発言をし、世界にその悪名を轟かせることになった。

そんなトランプの活動に対して、Anonymousが動き出した。昨年12月9日、攻撃指令#OpTrumpが発動されると、NYの高級マンションであるトランプ・タワーのWebが一時的にダウン。Anonymousはネット動画を通じて、トランプのイスラム教徒排除の発言は、ISISへのリクルートを助長する可能性がると批難し、今後の発言について注意を促した。

トランプに攻撃を行うAnonymousについて報道するネットニュース

面白いのはトランプを狙った#OpTrumpのサイバー攻撃が、過去のAnonymousの活動において、かなり盛り上がった点だ。最もサイバー攻撃が盛んであった2015年度ではベスト3に、全期間でみてもベスト8に選ばれている。

昨年の#OpIsisには及ばなかったものの、トランプは、2016年度の大統領選候補者の中で、最も「ジューシー(美味しい)」なターゲットであったと評されている。彼の人気は、アメリカでは「トランプ現象」とも呼ばれるほどで、Anonymousによるサイバー攻撃も、トランプ人気に便乗したお祭り的なものだと考えることもできる。

トランプは、イスラム教徒の米国入国禁止ばかりか、ISISのネット勧誘を阻止するためには、一部のインターネットを封鎖すればいいなどトンデモないことまで言い出している。「大統領になったら、ビル・ゲイツに電話で頼めばいい」と平然と語るトランプは、ネット民すべてを敵に回しており、Anonymousにとっては恰好の餌食だ

中には、トランプへの執拗なサイバー攻撃を続けるAnonymousの一派もいる。1月25日、大統領選挙初の予備選となるアイオワ州党員集会のWebサイトが、「Anonymous Conservative」を名乗るハッカー集団によって、書き換えられた。そこには「サラ・ペイリンがドナルド・トランプ支持を表明したことが、攻撃に踏み切った理由」とあり、「保守的な人たちならおわかりのとおり、サラ・ペイリンは国の厄介者で、アメリカのすべてを悪い方向に導く」とあった

サラ・ペイリンといえば、キリスト教右派に人気の元アラスカ州知事にして、2008年には副大統領候補に選ばれている。彼女は、25万件のアメリカ外交公電をリークしたWikiLeaksのジュリアン・アサンジをテロ容疑で投獄せよと主張して、Anonymousのサイバー攻撃の標的となったこともある。ちなみにこのAnonymous Conservativeは、昨年のミズーリ州ファーガソン市での黒人少年銃殺事件に絡み、KKKメンバーの個人情報流出やBlack Lives Matter(黒人の命も大切)運動に関わってきたチームだ。

多くの予想では、ヒラリーが大統領になると考えられていた。しかし、ヒラリーもサイバー空間での無防備ぶりを晒し、国民の信頼を失っている。彼女は、2009年から2013年までの国務長官時代に、個人メールアカウントを公務に用いており、それがルーマニアのハッカーによって暴露された。国家機密が他国のハッカーに丸見えになっていた可能性が疑われ、その責任が追求されている。

さて、2月1日から始まった予備選であるが、共和党代表の座を狙うトランプは、初戦アイオワでテッド・クルーズに敗れたものの、その後はニューハンプシャー、サウスカロライナ、ネバダと連勝と続け、最初の山場といわれる3月1日の「スーパー・チューズデー」でも手堅く勝利を収めている。

一方、民主党の代表として有力なヒラリー・クリントンはアイオワで首位を守ったものの、ニューハンプシャーではバーニー・サンダースに敗れ、波乱の展開となった。ヒラリーはネバダ州でなんとか返り咲き、サウスカロライナも連勝し、「スーパー・チューズデー」ではサンダースを見事に抑えた。それでも、大統領選挙の行方はまったく予想がつかない状況となっている。

Anonymousの#OpTrumpもまだまだ続きそうだ。

ケロッピー前田

ケロッピー前田

1965年東京生まれ。千葉大工学部卒。白夜書房(コアマガジン)を経てフリー。90年代半ばより雑誌『BURST』で国内外のアンダーグラウンド・シーンをレポート。『ハッカージャパン』(白夜書房)では、ハッカーカルチャーやサイバー戦争について執筆して好評を得てきた。

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